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雑種天国

誰でもそうだと思うけど、自分にとって「水が合う」街とか地域というのは、確実に、あると思う。わたしの地元は埼玉の田舎の山のほうで、そこで中学二年の夏休みまで暮らして、そのあと札幌に引っ越した。これは父親の転勤のためであって、札幌には五年、高校卒業まで住んでいました。
埼玉から札幌に行く、というのは、単純に「関東地方から北海道に行く」というだけでなく、「田舎から都会に行く」ということでもあった、なにしろ田舎なのだ、わたしの地元は。車に乗らないとコンビニに行けないのは当たり前、マックができたのもほんの数年前、もっと山の中に住んでる人だと、子供が学校に通う数年間だけ山の麓に借家をかりて、学齢が終わると山に戻っていくんだとか……。
札幌市はとても住みやすい街だった、と思います。わたしが住んでいたのは北区の、地下鉄の駅から近いところだったから、交通の便もよかった、それに札幌には通勤ラッシュもないみたいです。わたしは高校の時はバスで通っていました(電車とかが通っていない場所に学校があった)(高校のある場所はかなり郊外のほうで、荒野に学校がぽつんと建っている、という感じ)(結果として吹雪がすごかった)(吹雪がすごいことで有名な学校だった)。
お買い物とかで街に出ても、札幌駅とか大通駅のまわりだって、大混雑とかいうことはないです、街もきれいで、歩きやすい。家賃も安い。魚も旨い。タワレコもある。大きな本屋があるのも本当に嬉しかった(山には本屋などない)。
都会に住んでいることの恩恵をずいぶん受けていたと思うけど、でもそこにずっと住みたいかというと、全然そうは思ってなかった、大学は絶対に東京の大学に行く、と思っていた。
わたしが通っていた高校は進学校ではあったけど、偏差値が特別高い、ということはなかったし、ほとんどの生徒は北海道内の大学に進学することを希望していた。みんな、地元を離れたいとは思わないんだなあ、と思った。でも札幌に住んでいたらわざわざ東京とかに出たいとは思わないのかもしれない、充分に都会だから、と思った。
わたしは別に埼玉に帰りたいわけではなかった、具体的に東京に憧れがあるわけでもなかった、ただ居場所として「ここは違うなあ」とずっと感じていたと思う。札幌は本当に住みやすい街だった、きれいで便利で人は優しいし街の規模としてもちょうどいい、人が多すぎず少なすぎない。
大学受験のとき東京の高田馬場駅で降りて、駅前を見てびっくりした。札幌の端正な街並みを見慣れた女子高生には、びっくりするような風景だったんだなあ、と、今では思うけど、確かにわたしは驚いたのだった、あの猥雑で薄汚い高田馬場駅前の街並みを見て。驚いたけど嫌ではなかった。
なんで札幌がダメだったんだろう、とことあるごとにずっと考えていたのだけれど、最近やっとわかった、わたしはただ単に「猥雑で薄汚いもの」じゃないとダメなんだ。
たとえば東京で、どの街が好きか?という話をするとき、わたしはいつも「ホームレスがいるところ」と言ってた。高田馬場とか新宿とか上野とか。よくわからないけどホームレスのおっさんがいる街は落ち着く、安心する。それはそういうことだったんだ。大学も居心地がよかった、本当に猥雑で薄汚い学校だった、バカも天才もキチガイも貧乏人も金持ちも右翼も左翼もいた。
だから今高円寺に住んでて無闇に居心地がいいと思うのも、猥雑で薄汚い街だからだと思う。高円寺はオシャレな若者の街だと思っている人が多いようだけど、実際にはオシャレな若者もオシャレでない若者もじいさんもばあさんもいるし金持ちもいれば貧乏人もいる、外山恒一が演説するしヤクザもいる、風俗街も飲み屋街もある、いろんな人がいて、別になんでもいいよ、という感じがするのがいいんだと思う。でも実際には高円寺に住んではいても家からあまり出ないので、地元のコアな飲み屋とかはよく知りません、怖いので入れません、今日も一歩も外に出ませんでした。おわり。

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