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学生の頃は色んなバイトをしたよ、という人は多いと思うけど、わたしは全然色んなバイトをしなかった、高校の頃は学校がアルバイトを禁止しているのをいいことにバイトをしなかった、ちょっとだけ近所の小学生の勉強を見てお小遣いをもらうようなことはしていたけど、ほとんど子守りみたいなもんだし、宿題をやるところを監視して、あとは一緒に遊んでいたと思う。大学に入ってからはとにかく楽チンで割のいいバイトをすることしか考えなかったので、高校生が受験する模擬試験の採点のバイトとか、家庭教師とか、あと大学内の施設で事務的なことをするバイトを三年続けてやったり、データ入力の短期バイトをやったり、したくらいだった。
わたしはとにかく働くのがイヤだった、どんな仕事に適性があるのかなんて考えたこともなかった、できれば正規雇用されずに生きていきたい、というのが将来の希望だった、特技もなければ資格も何一つ持っていないし、興味のある職種もないし、大学は出たけれど、やりたいことはなし、音楽は好きだから、バンドでもやろうかな、と言ってバンドを始めるでもなく、なんかぼんやりとフリーターになった。
大学を卒業して派遣社員になり、コールセンター的なところで働いていたんだけど、一年半くらい経ったら業務が単調すぎてつまらなくなったのと、その職場はシフト制だったんだけどわたしはなぜか朝の九時から夜の九時まで拘束時間十二時間で週に四日働き、三日休む、という勤務形態にしており、それは八時間以上働いたほうが残業代がつくし職場としても夜のほうが忙しいのでとにかく夜シフトを入れるよう言われるため、週五で昼に来て夜まで働くよりは週休三日のほうがいいかな、と思って自分でそうしたんだけどこの生活は普通にきついので嫌になり、九時から五時までで終わる仕事がしたい!ということで別の会社に派遣で行くことにしたのだった。
コールセンターの仕事は分業制なので配置換えにならない限り同じ業務を毎日続けるし内容は単調だしコールセンターといっても仕事内容はデータ入力とか入力内容のチェックとかが多くてあんまり電話もしないので本当に飽きるのだったが、次の会社では一般事務で入ったので業務は多岐にわたっていた、電話を取り次ぎ、入力業務をし、文房具を補充し、来客にお茶を出し、暇だと事務所の掃除をする。郵便物を取りまとめて郵便局に持っていく。牧歌的な日々。当時はプライベートがあまり牧歌的ではなかったのでメンタル的には全く牧歌的ではなかったが、仕事は牧歌的だった。しかし派遣社員なのでお給料は少なかった、交通費は出ないし、電車の遅延で遅刻すれば時給が減るし、祝日が多ければ給与が減る。その会社は女子社員はみんな事務員で、契約社員と派遣社員しか雇用していなかった。専門的な仕事をやる女子の正社員はいないらしかった。三年くらい勤務して、契約社員にならないかと何度も誘われたけど断った。転職しようと思ったからだ。
わたしが勤務している間、その会社に同業他社から転職してきた男性がいたのだけど、全然仕事ができない人だった。仕事ができないし勤務態度も真面目でなく非常にしばしば遅刻や欠勤をするし、そのうち病気を理由に会社にこなくなり、次に出社したときには別の同業他社に転職することが決定して辞めてしまったのだった。わたしは彼の姿を見てあることを学んだ。
「あの人にもできるような仕事ならたぶんわたしにもできるし、あんな仕事ぶりでもよそから転職してきてまたよそへ転職していけるくらい受け入れ先がある職種なら絶対に食いっぱぐれがないぞ!」
それで彼と同じ仕事をしよう、と思い、求人サイトを見たら、当時はたまたま景気のいい頃だったので、けっこう求人があった、大学卒業時は就職氷河期だったけど、その時はたまたま求人が多かった、わたしの希望する職種もいくつか求人があった、そんでまず一個、勤務地が割と近くて求人広告の写真に同年代くらいの女の子が割とカジュアルな服装で写っている会社を見て年の近い同性がいてこのくらいのカジュアルファッションが許される会社ならやっていけるかもしれないな、と思い、応募したら、受かったので、そのまま入社した。というのが今の会社に入る経緯である。そして確かに食いっぱぐれのない仕事である、うちの会社では七十近いおじいさんも仕事をしているのだ、専門知識さえあればどんなに年をとっても仕事がある。
前の会社にいたとき、正社員が全員「仕事がバリバリできる人々」であったなら、たぶんわたしは自分も同じ仕事をしよう、とは思わなかっただろう、「自分にはとても勤まらないなあ」と思ってずっと非正規雇用のままだっただろう、「彼」のおかげでステップアップするきっかけが得られたのだ、ありがとうございます。今わたしがこうして正社員となり、交通費も支給され、ボーナスなども貰える身となったのは、ひとえにあなたを見て、「え、あいつ独身なのに都内にマンション持ってんのかよ、築地の寿司屋で寿司食ってんのかよ(彼は寿司屋に自分の名刺を渡したらしく、休職中に寿司屋から会社に年賀状がきていた)、どんだけ給料貰ってんだよ」と思ったおかげです。人生なにがきっかけでどこに転ぶかわからないよ。

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