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中学生のころ、クラスメイトの女の子が「うちのお母さんは、四年制大学を出て会社勤めをしていたんだけど、結婚するときお父さんが『仕事を辞めて家でおやつを作りながら子どもの帰りを待っていて欲しい』と言ったので仕事を辞めたんだよ」という話をしておったので、わたしはショッキングを受け、「家でお母さんが手作りおやつを用意してわたしの帰りを待っていたりしたら絶対に嫌だ!!!!!」と思いました、あまりにもショッキングすぎて今でも覚えているし、何度か人にこの話をして、「お母さんが家でおやつを作って待っていたりしたら嫌じゃない?」と同意を求めたのですが、「えっでも小学生の頃家に帰るとおばあちゃんが肉まんを作っていてそれがすごくおいしかったので嬉しかったよ」みたいなズレた反応しか返ってこないので、おかしいなーと思ったのですけど、この話について理解と同意を示したのはうちのお母さんだけだったと思います。
自分でも不思議なのは、どうして「おやつを作って子どもの帰りを待つ母親」という像に自分がそこまで過敏に拒絶反応を示したのか、ということです、だってうちのお母さんはおやつなんか絶対に手作りしないからです。家に帰ったらお母さんがいた、という記憶もあまりありません、お母さんは家の近くでパート労働をしていたので夕方になると帰ってくるけど小学生の帰宅時間には間に合いません、でも学校が終わったら毎日どこかへ遊びに行くので家にお母さんがいようがいまいがあまり気にしたことはなかった。習い事も塾通いもしていなかったので毎日毎日遊んでばかりの子どもでした。
たぶんわたしは野生の本能で良妻賢母思想に拒絶反応を示したのでしょうが、そうしたものに拒絶反応を示す自分の心象が面白すぎるのでそれ以来「母と子」というテーマに対して尋常ならざる興味を持つようになりました。今でも誰かに「オススメの小説なんですか」と聞かれたら、高校生の頃に読んだ笙野頼子の「母の発達」を挙げるくらいです。「母の発達」のすごいところは「母」を解体するにはあそこまでやらないとダメなのだ、ということを痛感するところです。
それで、最近は母と娘がどうのこうのいう本を立て続けに読んでおり、面白いです、こういう本を読むのは、自分の問題の解決のためというより、下衆な野次馬根性を満足させるためだけに読んでいるのでなおさら面白い、あわわわこんなお母さんが家にいたらどうしよう怖い!うちのお母さんがこんなお母さんでなくてよかった!みたいな感じです。ひどい話です。
端的に言うと、わたし自身は、おやつを作って子どもの帰りを待っている良妻賢母なお母さんも、娘と趣味を共有して一緒に遊びにいく友達親子なお母さんも、子どもをいつまでも一人前とみなせずに過干渉してくる過保護なお母さんも、全部嫌なんだろうなと思います。うちのお母さんはどのタイプでもなくて、娘に干渉するでもなく愛情をわかりやすく示すでもなく共感を求めるでもなく、ただ距離をとってくる、というタイプですが、それでも、できればこれ以上関わらないで欲しい……と思ってしまいます。お母さんに正解はない。あと、わたし自身はお菓子を作るのも料理をするのも好きだし、できれば手芸もできるようになって、編み物や裁縫で子どもの服を作りたい、などと不埒なことを考えておるため、普通に気持ち悪いお母さんになりそうです、中学生のわたしが見たら泣くと思います。ごめんね。

母の発達 (河出文庫―文芸コレクション)

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母が重くてたまらない―墓守娘の嘆き

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