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インターネットでは最近「女は若いうちに子供を生むべき、卵子は老化するし」みたいな話題がちょっと流行ったけど、わたしは現在たまたま妊娠しており、妊娠することにより改めてよくわかったことが結構ある。「子供を生むなら若いうちのほうがいい」というのもそれはそれでその通りだと思うしいま三十歳なんだけどあと五歳くらい若かったらなあ、と思うこともあるけど、じゃあ二十五歳のときに「子供を作るぞ!」という気持ちになったかというと、全然、全く、そんなつもりはなかった。
妊娠して思ったのは、生活がすごく不自由だ、ということで、しかも産後は更に不自由になるらしいのだけど、でも別に多少不自由してもいっか、と思う。でも二十五歳くらいの頃、同じように妊娠して不自由を強いられていたとして、産後もあと二十年程度は不自由が続きます、ということになった場合、「別にいっか」と思えたかどうかはわからない。多分「えー……」という感じだったと思う。あれもしたかったしこれもしたかったよ、それなのに子供ができたから諦めたよ、となっていたと思う。
二十五歳くらいの頃、いまの会社に入社したんだけど、入社したときは三年くらいで転職するつもりだった。ひと通り必要な知識やスキルが身についたら、それを元手にもっと待遇のいい同業他社や、経験が生かせる別の関連業種に転職しよう、と思っていた。しかし五年経つ間に結婚して妊娠してしまったので、今では「もう定年までこの会社に寄生して生きるしかない……」と思ってる、だって既婚で小さい子供がいる女がいまよりも好条件で転職するのは多分無理だからだ。本当に唯一無二の才能や能力がある人なら別だけど、わたしは単なる会社員だし……。
でも、例えばわたしの夫が転職しようとしたとして、既婚で小さい子供がいるために転職が難しくなる、ということは別にないだろう。企業は小さい子供がいる女は子供の病気などの都合ですぐに休むし、と思っているけど、小さい子供のいる男が子供の病気などの都合ですぐに休む、という可能性は想定していないからだ。
転職の選択肢は潰えたけど、別にそれがすごく不満というわけではない。わたしは不満ではないが、そういうことに不満足である女性はいるだろう。若いうちに子供生め、と言われたって、二十代前半くらいの頃「妊娠すること」は「人生詰んだ」と同義だった。
この先子供が生まれて、経済的にも時間的にもいままでよりずっと制約のある暮らしになっても、それなりに「別にいっか」と思えると思うんだけど、それは二十代の間に好きなことをやって好きな場所に住んで自由な生活を謳歌していたからだと思う、一人暮らしをしていた頃は、週に一回ライブを観に行って、あるいは週に一回誰かと飲みに行って、週末は恋人とデートをして、年間五十枚CDを買って、好きなだけ本を買って、街中に住んでいたから暇なときは近所の好きなお店にいつでも遊びにいけて、家にいてダラダラしていても誰にも文句言われない、という生活だったけど、そのおかげでいま、国道沿いにブックオフとユニクロとマクドナルドが並んでいるだけの「ザ・郊外」みたいなところに住んで、家で夫のためにお菓子を作りお腹の子のために手芸をする、みたいな気持ち悪い行動をしていても毎日楽しいし幸せ、と思えるのであって、二十代の好き放題やる期間がなくていきなり「ザ・郊外」の家で「君は家で子供のためにおやつを作ったり手芸をしたりしていておくれ」などと言われたら死んでしまうだろう。
だから若い娘を捕まえて「早いうちに子供生んどけ」というのは酷な話だなあと思う。若い娘だって大半は「そのうちいつかは」と思っているんだろうけど、「いまは他にやることがあんだよ」っていうことだろうし、やりたいことが満たされないまま子供を持つと「自分ができなかったことをこの子にはやってほしい」みたいな話になって子供が迷惑するし、そうそう単純な話ではない、現状妊娠・出産・育児にまつわるリスクを圧倒的に背負うのは女のほうで、本来男にも分業可能な育児の部分すら母性神話振りかざして「やはり育児はお母さんがしないと」みたいなこと言うて回避しようとする奴が多いのに、知らんおっさんから気軽に「女は若いうちに子供を生むべき」とか言われたらムカつくに決まってる。でも佐野洋子が「女は子供を生んどれ」って言ってたことについては、佐野洋子が言うんだからそうかもなあ、という気持ちになってくるから、えこひいきしてすみません……。

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